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『公研』2024年2月号「ひろば」 コロナ禍のステイホーム期間中、幼少期ぶりに日々のバイオリンの練習習慣を取り戻した。バイオリンが楽しいのかと言われると99％は苦行である。なぜならバイオリンという楽器はとにかく難しいのである。バイオリンの難しさは、まず弦のどの場所を押さえると、ドレミファソラシドの何の音が出るか鍵盤のような印がないところにある。正しい音を出すためには、まず正しい音を認識できる音感が必要になってくる。その上で、狙っている音の場所を指が正確に捉える指の感覚が必要になる。０・１ミリでも押さえる場所が違ったり、押さえる指の角度が違ったりすると音は狂ってしまう。音感と指の感覚を研ぎ澄ましておくには、私が「指の筋トレ」と呼ぶ日々の音階練習がとても大事である。気の遠くなるような地道なトレーニングであるが、ゴルファーが打ちっ放しでスイングを調整し、ランナーがフォームを整え、走り込むのに似ているのではないかと思う。 こんなことを書いているとバイオリンは苦しいだけのようであるが、１％の楽しみは仲間と音楽を奏で、人々に演奏を聴いて貰う瞬間にある。私が勤める東芝には従業員オーケストラがあり、年に２回、定期演奏会を行っている。１９８９年に発足した東芝フィルハーモニー管弦楽団のメンバーのバックグランドは、90代から20代までと年齢も職種も幅広く、仕事や育児に忙しい世代もいれば、取り組み方は人それぞれであるが、音楽と会社という共通点を持った仲間達はどんな時も温かく迎え入れてくれる。演奏会の本番近くなってもかなり怪しい出来栄えの時もよくあるが、本番当日にはいつもぴしっと仕上がるので、メンバー皆、納期を守る意識は強いのかもしれない。こうした毎回の演奏会の積み重ねは、演奏する上での安心感となってくる。また、サポーターが沢山おり、満席の大ホールで演奏させて貰う瞬間は特別なものである。 コロナ禍で東芝フィルハーモニーの活動は長く中断されたが、２０２２年10月に約３年ぶりの演奏会を開催。そして、昨年10月には第50回の節目の演奏会を行うことができた。当たり前のように思っていたオーケストラの活動も、社会環境、メンバー一人ひとりの練習時間のコミットメント、日々の鍛錬、周囲のサポートがあってのものとだとつくづく感じる。 次は２０２４年６月の第51回演奏会である。シューマンの交響曲第３番をメインにブラームスの大学祝典序曲、ワーグナーのタンホイザー序曲と華やかな響きがミューザ川崎のホールを包み込むことだろう。次の50回がどのように積み重ねられるかはわからないが、個人的には、第１００回までぶれない気持ちと音を持ち寄れるよう、日々、地道にトレーニングに励みたい。 東芝エネルギーシステムズ 海外営業統括部 海外営業第三部 海外営業第九担当 高橋 とも子

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