編集メモ – 公益産業研究調査会／koken

『公研』2024年1月号「編集メモ」 エジプトのピラミッドは紀元前２７００年から紀元前２５００年ごろに建造されたとされる。エジプトで小規模な農耕が始まったのは紀元前７０００年ごろとされるから、農耕を始めてから４千年かけて巨石建造物をつくるまでに到ったと見られてきた。 １９９４年、ギョベクリ・テペ遺跡（トルコ）の再調査によって、地中から巨大なＴ字型の石柱（10トンから20トン）や円形や長方形の遺構が発見され、約１万２０００年前（紀元前１万年）のものであることがわかった。メソポタミア文明が発祥した紀元前３５００年ごろより７千年ほど前の後期旧石器時代の後半につくられていたのだ。 狩猟生活を送っていたと考えられていた時代の人間は、どうやって10トンクラスの巨石を扱っていたのか。そのころはネアンデルタール人の血筋が「怪力の巨人」として生き残っていて、ホモ・サピエンスと共生していたのだろうか。 （常川） 今月号のセミナーで、「ホモ・サピエンスは、とにかくどこか遠くに行きたいというフロンティア精神があったのでは」とのお話があった。ＧＰＳに頼りっぱなしで、紙の地図すらまともに読めない私からすると、遠い祖先たちの度胸には頭が上がらない。 当然、４万年前は目的地の下調べもできないだろう。誰も見たことのない景色を目の前にして、彼らはどのような気持ちになったのだろうか。さすがに私は新大陸の発見はできないが、この先の人生で何回初めての景色を見ることができるのか。楽しみだ。自分の中の小さなフロンティア精神が高まるお話だった。 （薮）