東京電力 – 公益産業研究調査会／koken

『公研』2023年6月号「ひろば」 少し前にお笑い芸人のバカリズムさんが脚本を担当したテレビドラマ、『ブラッシュアップライフ』を家族全員で楽しんで観ていました。安藤サクラさん演じる主人公が不慮の事故で死んでしまうのですが、何度も同じ人間に生まれ変わって人生をやり直していくというタイムリープもののドラマです。 このドラマの中で主人公は、若くして事故で死んだ後、死後の世界で転生担当者にグアテマラ共和国のオオアリクイに生まれ変わることを伝えられます。なんとかオオアリクイへの転生を回避したい主人公は、他の方法はないのかと担当者に食い下がります。すると、今世ならもう一度やり直せることを言い渡されます。そして、今世で徳を積むと来世も人間に生まれ変わる可能性が高いことも教えられます。 それを聞いた主人公は、今の記憶をそのままにもう一度赤ん坊から自分の人生をやり直します。そして、人生をやり直す度に、どんどん自分のスキルや能力をブラッシュアップして、徳を積むべく周りの人を助けていきます。 例えば、かつての中学教師の痴漢冤罪を防ぐために、その電車に乗らないよう仕向けたり、大切な友人が不倫に陥らないよう相手の男性に釘を刺したり。さらには、多くの人命を救うために、薬学の研究者になり新薬を開発したり、５周目の人生ではパイロットになり大規模な飛行機事故の発生を防ぐなど、生まれ変わる度にどんどん人生をブラッシュアップする様子がシュールに表現され、観ている私たちも、「もし、もう一度人生がやり直せたなら……」という気持ちを共感しながら楽しむことができました。 かくいう私も実はジュニア（小学生年代）のサッカーに携わって、３周目です。もちろん死んで生まれ変わったというわけではないですが、地元のジュニアサッカーの活動を通じて、ブラッシュアップライフ？ を体感しているところです。 長男が小学生の時（１周目）は、私は熱心な保護者でした。自分の子供がもしかしたらメッシやロナウドのようなプロサッカー選手になれるのではないかと思い、熱心に子供をサポートしていました。高いレベルでサッカーをさせたいと強豪チームのセレクション（選抜試験）を受けさせたり、複数のサッカースクールに通わせるなど入れ込んでいました。なので、試合でつまらないミスをすると、つい感情的になり怒鳴ってしまうなど、今となって思い返すと、典型的な毒親でした。当時の振る舞いを思い出すと、恥ずかしい気持ちと子供に申し訳ない気持ちになります。 ２周目は、次男が入団した時です。前回の反省を活かし、子供と少し距離をおいて陰から支えるようにしました。そして私はサッカーチームの副代表となりチーム運営に携わりました。東京には６００を超えるジュニアサッカーチームがありますが、その多くはボランティアが支えるいわゆる街クラブです。私は結局３年近くチームの副代表として活動しましたが、実際運営に携わると１周目では気づかなかったチーム運営の大変さに直面しました。 例えば、子供同士のけんかやコーチの指導への不満などです。ジュニアサッカーチームのいわゆる「あるある」ですが、私はこれらの問題に対応する度に、立場が違う者同士の多様な価値観と日頃のコミュニケーションの大切さをあらためて学びました。 そして今年の春、ようやく次男も卒団しジュニアサッカーも終わりかなと思っていたところ、代表からまさかのコーチのオファーがありました。悩んだ末に、１年だけ恩返しのつもりで引き受けることにしました。ジュニアサッカー３周目はコーチとしての挑戦です。 コーチを始めてすでに数カ月が経ちましたが、ボランティアコーチとして徳を積むどころか、逆に私が子供たちから素晴らしいパワーと学びをもらっています。子供たちの純粋な目の輝き、躍動感あふれるプレー、忖度なく喜怒哀楽を全身で表現する姿を見ていると、こちらが勇気と感動をもらえます。彼らの日々成長する姿が早く見たくて週末が楽しみになるほどです。 最後になりますが、ドラマの中で主人公が友人から「あなた何周目？」と質問される場面があります。実際は、自分の他にももっと周回を重ねている人がいることがわかり主人公は衝撃を受けます。 私の周りにもそんな人がきっとたくさんいるのだろうと思い、同時に私のブラッシュアップライフ３周目は到底１年では終わらないなと覚悟を決めました。 そして、この先果たして何周目まで行けば、三笘薫選手や田中碧選手のようなプレーヤーを輩出できるのだろうかと夢で胸を膨らませています。 東京電力 福島第一廃炉推進カンパニー 廃炉資材調達センター 所長

ジュニアサッカーで ブラッシュアップライフ？ 【福田史】

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