東北電力 – 公益産業研究調査会／koken

『公研』2024年1月号「ひろば」 私は新潟県の海辺の町・柏崎市で少年時代を過ごした。砂浜から遥か水平線を臨む先に、わが国最大の離島・佐渡島が位置する。冬晴れの空気が澄んだ日には、本土から32キロメートル先の佐渡島が忽然と視界に現れる。現在は新潟港から超高速船によって１時間強で佐渡と結ばれ、別に直江津港からのルートもあるが、半世紀前は半日を要する船旅だった。当時のわが家は佐渡への家族旅行を恒例行事としており、夢中になって植物標本や昆虫採集に駆け巡った夏休みが懐かしい。 日本の原風景が残された佐渡島の面積は東京23区の１・４倍で、民謡・佐渡おけさや重要無形民俗文化財の小木たらい舟、伝統工芸品の竹細工、特別天然記念物・野鳥のトキが生息する地域としてご存じの方も多いと思う。また、『古事記』にも関連の記述があるなど歴史と伝統を有し、上杉氏等の支配期を経て江戸時代には国内最大の佐渡金山が発見され、幕府直轄の天領として国の財政を支えた。県内屈指の観光資源としても島に賑わいをもたらしたが、昭和期に10万人を超した人口は過疎化の影響等で現在は５万人ほどが暮らしている。 佐渡島は四季の変化に富み、対馬暖流の影響で冬の気温が本土より高いため積雪量も少ないのだが、昨冬の寒波では湿気を含む大雪・倒竹等の影響で大規模な停電や通信障害が発生。私自身も離島におけるライフライン確保の難しさを痛切に感じる機会になった。一方で、新潟県では「自然エネルギーの島構想」と題し、系統が独立する佐渡島・粟島における再エネ導入拡大等を通じて、地域課題の解決や循環型社会形成に向けた検討がなされ、昨年には最適な需給制御モデルの実証や島内施設への太陽光発電・ＥＶ・充電器導入促進施策等がとりまとめられた。本構想のパートナーである東北電力ＮＷが設置する太陽光発電所（粟野江地区）と蓄電池システムも先ほど運転を開始した。最新の技術と多くの知見を組み合わせることで離島の脱炭素化と暮らしの安心安全に寄与することに期待している。 なお、佐渡金銀山は２０１０年に鉱山遺産群としてユネスコ世界遺産暫定リストに記載され、その後も関係者による熱心な働きかけが続いている。22年には政府からユネスコに推薦書を提出、現在は諮問機関イコモスによる現地調査・審査がなされており、順調ならば24年夏にも国内26件目の世界遺産に登録される。地元では新潟空港・佐渡空港から国内各地を結ぶトキエアの24年初の就航も予定され、観光客の受入対応を含めて気運が高まる。国内有数の自然環境と伝統・文化、それらを支える科学技術が調和する場所、悠久の時を刻む佐渡島へ是非ともお出掛け願いたい。 東北電力東京支社副支社長

悠久の時を刻む島・ 佐渡への誘い【徳山秀】

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